2011年6月9日木曜日

6月9日 現場からの要請

本日のドクターヘリ担当は小林,吉山先生,藤巻看護師.朝の点検もいつも通り入念に行います.

☆ドクターヘリ1・2件目 交通外傷(複数傷病者)

朝のカンファレンス中に要請PHSが鳴ります.いつもの光景なので,最近は皆平然とプレゼンを続けています.

覚知同時要請.こちらもいつもの要請形式なので,ヘリスタッフは平然と離陸します.ドクターヘリ・カーシステムが根付くとこうなるんですね.いわゆる「日常の光景」.

離陸後,吉山先生は運航管理室に傷病者情報を聞きます.「トラックと乗用車の事故.複数の傷病者がいる模様.1人は車内閉じ込め.」大変そうな事案です.機内では藤巻看護師が輸液を2セット用意.内1セットは加圧バック付き.

10分もかからずヘリは現場上空へ到着.上空から事故現場を確認します.「こりゃ,大変だあ・・・」 現場直近に着陸可能な場所がないか確認しますが,谷間でもあり適当な場所が見当たりません.と同時にヘリ支援隊からランデブーポイントの安全確保完了の無線連絡が.ならばランデブーポイントへ着陸し支援車で現場へ向かうのが一番の早道です.

JA822Hドクターヘリは少々の砂塵を巻き上げながらランデブーポイントへ着陸.医療スタッフは足早に支援車へ乗り込み現場へ向け出発!当然,ヘルメット,革手袋装着済み!!

数分で現場到着.トラックとつぶれた乗用車が2台.1台の運転席に傷病者が1名閉じ込められ,救助作業中.現場救急隊たちは知った顔ぶれ.状況を速やかに確認し,活動方針を擦り合わせます.

「1名はたった今,救急車収容済み.1名は救出に30分近くはかかるでしょう.1名は歩行可能.」
「吉山先生,救急車内の患者さんを診て!藤巻さんも一緒に.小林は救出中の患者さんの状況を確認.」

・・・救急車内の患者さんは幸いにもABCDは安定しているようです.すぐにでも現場離脱可能.ならばヘリでTECCMCへ搬送し,その間に救出作業を行い,救出後に再びヘリでのピストン搬送を決断します.そうと決まれば行動あるのみ.吉山先生を乗せた救急車はランデブーポイントへ.そこで1人目の患者さんをヘリへ搬入し,吉山先生同乗にて搬送です.

現場では救助作業中.救命士さんに「患者さんの評価から救助優先か治療優先か教えて!」と問いかけると,「初期評価では若干脈の触れは弱く,全身観察で左呼吸音の減弱もありそうですが,まだ救助優先で!」即座に答えが返ってきます.その指示に従い,小林,藤巻看護師は安全な場所で待機しつつ,歩行可能なもう1人の傷病者の診察を行っていると,現場上空をJA822Hドクターヘリが飛んで行きます.まるでドラマ・コードブルーのような構図ですが,これが北近畿のリアルな救急現場です.

「作業スペース確保!バックボード用意!・・・1,2,3,救出完了!!」と同時に現場での外傷初期診療開始!意識,呼吸は問題なさそうですが,冷汗があります.やばいかも.速やかに全脊柱固定を実施し,救急車内へ.バイタルチェックと輸液路確保,そしてFAST.「腹腔内出血!?後腹膜血腫!?マシモでモニタリングしながら搬送するよ.」 救急車はランデブーポイントへ向け出発,と同時に運航管理室から携帯に連絡,「2,3分後にヘリはランデブーポイントへ再着陸予定.」計算通りのミッションです.

救急車がランデブーポイントへ到着と同時にヘリも着陸,速やかに患者さんをヘリへ乗せ換えTECCMCへ.機内ではPVI, SpHbもモニタリングしながら輸液の調整を行います.

そして,ヘリポートからdirect trauma CTへ.陸送なら1時間以上かかる地域での閉じ込め事案,受傷から1時間程度で根治的治療に向け医療スタッフが動き始めました.もちろん,TECCMCへ同時に搬入したお二人とも救命しております.

☆ドクターヘリ3件目 呼吸困難(離陸後キャンセル)

覚知同時要請です.「突然の呼吸困難.意識も朦朧.」との情報です.ヘリは5分程度で現場上空へ.ちょうど救急隊も現場到着したようです.覚知同時要請だと,これだけ早く現場医療投入が可能な体制がとれるという典型事案です.

ランデブーポイントへ着陸する体制をとっていると,「ABCD安定.救急隊のみで直近医療機関搬送可能.ヘリキャンセル.」との無線連絡.大事に至っておられなかったようです.機内は安堵の空気に包まれ,帰投です.

適切な同時要請と現場判断.非常に良いヘリミッションでした.

☆ドクターヘリ4件目 小児アナフィラキシーショック

夕方の事案です.「小児,大豆によるアナフィラキシーショック.」現場救急隊からの要請です.陸送なら20分はかかりますが,ヘリなら数分でランデブーポイントへ着陸です.

ヘリが着陸すると,救急車はすでにランデブーポイントへ到着済み.車内に乗り込み診療開始.子供さんは意識朦朧とグッタリしています.顔も腫れぼったく,紅潮.呼吸,循環は保たれていますが,病歴,所見からもアナフィラキシーは間違いないようです.アドレナリンを投与し,速やかにヘリ搬送です.

幸い搬送中に意識レベルも改善し,元気に泣き叫ぶようになりました.安心 (^_^).


本日も的確かつ有効にドクターヘリを活用していただき,ありがとうございました.患者さんにとっては,間違いなく有益でありました.全ては目の前の患者さんのために,現場からの意思統一が出来ている地域は心地よいですね.


今日は消防防災ヘリの搬入もありました.山中での救助事案.防災ヘリ着陸時,ヘリポートを空けるためにドクターヘリは医療スタッフを乗せ,但馬空港へ避難(?)します.

但馬空港にて.TECCMCへ向かう防災ヘリ.小さくてわかんない??

搬送を終えた防災ヘリは給油のため但馬空港へ.ドクターヘリと防災ヘリの2 shot写真です.


吉山先生と藤巻看護師は防災ヘリに大興奮(←いつもドクターヘリに乗ってんじゃん (-_-; ).ホント,珍しもの好きですねえ.航空隊の皆様,お見苦しいところをお見せしましたm(_ _)m


皆様,本日もお疲れさまでした.