2012年6月20日水曜日

6月20日 ドクターヘリ,ドクターカーは本当に有用か?

ドクターヘリ,ドクターカーは本当に有用か?よく問われることです.

有用性の一例では,
・早期医療介入による救命率向上.
・医療介入による現場医療トリアージ.
・搬送時間の短縮と地域の救急車の早期開放(ヘリのみ)
などでしょうか.いずれもある程度は数字で証明可能ですし,学会などで報告してきた通りです.また,地域救急医療システムの中で,ヘリ,カーを最大限有効活用するためには,覚知同時要請が必須です.確かに「結果的に」オーバートリアージであった事案はあります.それは病院に搬入して,諸検査を行った結果論であり,適切な要請基準に則したものであれば何ら問題ありません.限られた医療資源であるドクターヘリ,ドクターカーを地域で有効に活用するためには,何でもかんでもヘリ,カー要請してはならない,根拠(単にキーワードに合致するだけでは無く)に基づき要請すべきと全ての消防本部が考えてくれています.また,逆にアンダートリアージこそが傷病者にとって,不利益であることも重々理解されています.これからも当地域に応じた病院前救急診療の体制構築に邁進したいと思います.


今日は,医師が現場に出向くことが有用であった事案です.このような事案は稀ではなく,当地域では普通に行われている事です.

トンネル内,乗用車の事故,横転,閉じ込め事案.ドクターヘリ⇒支援車による医療スタッフの現場投入です.傷病者は出血性ショック状態,静脈路確保し初期輸液を行いつつ救助を待ちます.


救出を待つ間にフライトドクターはTECCMCへERT/ERLのprehospital orderと,ドクターカーによるO型輸血の現場搬送を指示!

傷病者が救出,と同時にレベルダウン!やはりFAST positive!!ヘリは日没にて帰投,救急車内に搬入し,TECCMCへ向け出発です.走行中に気管挿管,胸腔ドレナージ,そして,ドクターカーと途中ドッキングし緊急輸血開始.現場からの外傷診療開始!

TECCMC初療に搬入,そしてそのままdamage control surgery.unexpected survivor(予測生存率50%以下)の患者さんを救い上げました.

外傷チーム(永嶋先生,岡先生 他).
外傷外科医,チームの存在が重要です.


さて,次は山岳事案です.当地域では山岳事案は当たり前.山中にヘリは着陸できませんので,医療スタッフは10kg近い資機材を背負って患者さんのもとへ向かいます.
 
オートパルスを背負って颯爽と駆け上がる長嶺先生.

こんな斜面.
頑張れ,あ○みナース!
最終的に現場投入された前山先生による初期診療を継続させつつ,防災ヘリによる吊り上げ救助.

吊り上げ救助中もオートパルスは作動.
呼吸管理は気管挿管にて吊り上げ中もBVMを押すことで可能.


そして,山の麓で防災ヘリ,ドクターヘリとドッキングし治療を継続します.医師にしか出来ない治療,薬剤投与を考えると,考えられる選択の中ではBEST MISSION!



都会とは異なる医療事情,病院搬入まで救急車で1時間以上かかる地方の現状.救命救急センター適応事案,各消防本部の年間出動件数,ヘリ管轄範囲から試算されるヘリ出動件数と,現状の出動件数はほぼ一致しています.さらに本事業を成熟させ,地域のシステムとして確立させていくためにも,関係機関の皆様,引き続きよろしくお願い申し上げます.


ヘリを迎え入れるTECCMCスタッフ.重症の患者さんが搬入されるのでしょうか.スタッフが一丸となり,今日も大切な命が救われます.