2012年9月27日木曜日

9月27日 Trauma Bypass〜救命士が救い上げる命〜

重症外傷は受傷から根治的治療までの時間が救命に直結します.病院に搬入すれば助かるというものではなく,外傷チーム,緊急輸血体制,そして初療室手術の体制が整っている救命救急センター・外傷センターではければ助からない命が存在します.だから緊急手術まで1時間かかる病院に搬送するよりは,現場から多少時間はかかってもERT/ERLが数分で行われるセンターへ搬送すべきなのです(当地域ではこの搬送中にドクターヘリ,ドクターカーを絡めた医療体制をとっています).これが「Trauma Bypass」,救急隊の観察,評価の腕,そして迅速な判断にかかっています.


ある夜,センター長,永嶋先生が初療担当夜勤でした.比較的のんびりとした初療で,初期研修医の先生がWALK INの患者さんを診察,永嶋先生がコンサルタントで指導しています.

その静寂をやぶるかのようにホットラインが鳴ります.「男性,閉じ込め事案.救出までにはまだ時間がかかります.胸部外傷などが疑われます.Trauma BypassでTECCMCへの事前受入の問い合わせです!」 当センターのドクターカーの運行エリアに入っていない地域からの問い合わせです.ドクターカーは出動不可ですが,受入の答えはもちろん「OKです!」 

しばらくして再びホットラインが鳴ります.「救助完了!冷感,湿潤がみられます!!搬送します,よろしくお願いします!!!」 センター長,永嶋先生はナース達と受入準備を行いつつ,ドクターカー勤務の三浦先生も初療に呼び出します.

救急車到着.永嶋先生は救急車まで患者を迎えに行き第一印象・・・「ショック!」

初療に搬入しprimary survey.JATECインストによるリアルJATEC.ABCDEの評価は一瞬です.「FAST pericardiac effusion positive!」とセンター長,と同時に永嶋先生は頸静脈怒張を確認します.両側の上腕に16G針を三浦先生は留置,Cの異常は改善傾向なし,むしろ徐脈傾向に.「開胸するよ!」センター長,永嶋先生は同時に指示します.三浦先生は気管挿管,麻酔の準備.そして,外傷医・岡先生,麻酔医・前山先生の呼び出しも同時に行います.


初療搬入から数分,心破裂の根治的治療が開始されました・・・

数日後,TECCMC ICUで元気におしゃべりされる患者さんがおられました.まさにTrauma Bypassが奏効した事案です.現場の救命士の判断,若い命を救い上げました.今後はドクターカーの運行エリアに入っていただき,さらにより良い医療体制を構築できればと思います.


TECCMCの日常画像集^^

元祖師弟コンビの岡先生,三浦先生.一緒にいるのは濱副師長(フライトナース).この日のヘリ機内は濃い〜空気だったようです.

医療スタッフが現場に投入されている間は住民の方への見学会&写真撮影会.身近な医療システムとしてのドクターヘリにご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます.

機内の医療スタッフ.真剣な表情の長嶺先生,ミッション終了し安堵の清水看護師.タイミングで寝てるように見えるだけだよ〜って言っておられました.誰も突っ込んでないのに^^;

現場の永嶋先生,安積看護師.初療搬入後は診療と共にヘリ記録作成にカルテ記載.事案が重なると大変です.

初期研修医の先生に指導する武井先生(左),前山先生(右)の黒縁コンビ.いろんな事を指導医のもと,経験して下さいね.指導医も日々勉強ですね^^

 ドクターヘリ運航終了.青い空に月が見えています.この時期は日没が早く,17時過ぎには要請終了.あとはドクターカーにその任務を任せます.お疲れ様でしたm(_ _)m