2011年3月12日土曜日

3月12日 災害派遣2日目

5時30分 スタッフ会議にてドクターヘリでの出動,人選は小林,幸部隊員(当直中でしたがオンコールの先生を呼び出して出動),藤巻隊員,藤田隊員,目的地は福島県立医科大学と決定.ドクターカーに積み込んだ資機材をドクターヘリに積み替えます.


ヘリ内は積み込める資機材も限られており,出来るだけコンパクトにシンプルにします.それでも隊員個人の荷物はかなり制限されます.ちなみに小林の持ち物は財布,名刺入れ,歯磨きセットだけです.数日なら問題ないでしょう.

積み込みが終わり,出発までの時間もEMIS,インターネットで情報を集めます.


そんな中,TECCMCの初療には外傷CPAの搬入が.複数傷病者の情報もあり,小林や居残ってくれてたスタッフが初療に応援に行きます.災害派遣も大切な任務ですが,日常の業務も大切な大切な任務なのです.居残ってくれた皆さん,ありがとう.

夜が明けました.豊岡の特長である霧も少し発生していますが飛行に問題なさそうです.


6時40分 多くのスタッフ,病院職員の方々に見送っていただき,JA822Hドクターヘリは離陸します.

ドクターヘリの後部キャビンはドクター席2,ナース席1,ストレッチャーといった構造です.というわけで,隊員1人はストレッチャーに寝て行くことになります.


幸部先生,窮屈な思いをさせてすみません・・・

7時34分 名古屋・小牧空港に着陸.給油を行います.


7時55分 離陸.次の給油ポイント「東京ヘリポート」を目指します.その途中,今回の地震で先端が曲がったとされる東京タワー.よくわかりませんが,自然の力は計りしれません.


9時21分 東京ヘリポート着陸.かなりの報道ヘリが駐機,給油しています.


9時44分 離陸.目的地の福島県立医科大学を目指します.途中,瓦のずれた家屋が見えます.沿岸部を飛んでおらず,まだ今回の地震,津波の威力・脅威を知る由もありません・・・

10時53分 福島県立医科大学グラウンドに着陸.


学生さんの案内でDMAT本部へ赴き,登録を済まします.そして,その足で運航管理室へ.ここが今回ドクターヘリミッションを統括する心臓部です.すでに全国から数機のドクターヘリが参集し,ミッションに従事しています.


早速,施設間搬送のミッション要請です.本部に情報収集,業務調整の任務で幸部先生,藤田看護師を残し,小林,藤巻看護師でミッションに飛びます.



11時28分 福島県立医科大学離陸.給油をした後に依頼元の病院へ飛ぶプランです.


11時46分 福島空港へ着陸.給油を待ちます.ところが報道ヘリをはじめ,非常に多くのヘリが給油を待っています.給油の順番は申し込み順.ドクターヘリも消防防災ヘリも関係ないそうです.「命」に直接関係しない報道ヘリの給油がどくたーヘリの給油に優先される現状に大いなる矛盾と問題を感じます.ジェット燃料の給油問題,今後解決すべき問題の1つです.

福島空港ではSCUの準備が行われていました.顔なじみの先生方もおられ,全国のDMATが参集していることを実感した瞬間です.


結局,給油に1時間以上かかり,我々のミッションは他のドクターヘリが担当することとなってしましました.さらに問題が.案の定,携帯電話が通じません.運航管理室へ連絡をしようにも不通.我々が持参した衛星携帯も先方の回線が空いておらず不通・・・これではミッションの連絡もしようがありません.通信手段,いつの時代も大きな大きな問題であり,課題です.

13時06分 福島県立医科大学へ一旦戻って指令を待ちます.すると,宮城県・霞目駐屯地にSCUが立ち上がっており,そこからの域外搬送のミッション指令が下ります.SCUが立ち上がっているなら,そこに幸部先生,藤田看護師を投入しつつヘリミッションを行うことにします.

宮城県に向かう途中,初めて津波の被害を目の当たりにしました.絶句です.コンビナート火災も鎮火出来ておらず黒煙を上げています.仙台空港は水浸しで滑走路に乗用車が・・・想像を絶する光景です・・・



13時59分 霞目駐屯地着陸.幸部先生,藤田看護師は情報収集を兼ねSCUへ.

14時15分 小林,藤巻看護師は程なく搬送されてきた患者さんをヘリに乗せ替え,山形県の病院へ搬送します.搬送担当のDMATから申し送りを受け,広域搬送用のカルテをもらいます.



クラッシュ症候群.阪神淡路大震災で多く見られました.津波にさらわれ,泥に1晩埋まっていたところを救出されたそうです.典型的なポートワイン色の尿.


14時42分 山形県の病院ヘリポートへ着陸.初療室までストレッチャーで搬入し,申し送りを行います.診療機能が維持された病院で早く回復してください.


被災地から被災地外への広域搬送.小回りがきき,機動性のあるドクターヘリがもっともっと活用されることを願います.

霞目駐屯地へ戻る途中の山形空港で給油します.山形空港は福島空港のようなヘリ渋滞はなく,給油も速やかに終了です.そして,給油中に次ぎのミッション指令が入ります.これも連絡手段が麻痺しており,福島県立医大運航管理室の固定電話→豊岡ドクターヘリ運航管理室→機長の携帯といった系統で指令が伝達されます.


16時02分 霞目駐屯地に着陸.患者さんを乗せた救急車(搬送車)の到着を待ち,到着と同時にドクターヘリ内へ収容,搬送担当のDMATから申し送りを受けます.



16時45分 離陸.頭蓋内疾患の患者さんです.機内では血圧などに十分注意します.

17時03分 山形県の病院へ到着.初療室までストレッチャーで搬入し,申し送りを行います.


途中,山形空港で給油.日没の関係で福島までは帰投出来ないと判断し,今宵は霞目駐屯地で駐機,我々も同場所に宿泊することとします.

17時38分 霞目駐屯地着陸.本日のミッション終了となります.すると,見慣れたドクターヘリも着陸してきます.大阪ドクターヘリ.そう,明日は関西の2機でここ.霞目を担当しましょう.


夜間は駐屯地の外来宿泊棟をお借りすることが出来ました.しかし,ここも被災地.電気,ガス,水などのライフラインは全て止まっています.大阪チームと共に,懐中電灯の明かりを頼りに,持参したパンなどの食料を皆で分け合い夕食とします.


本日の課題などを抽出し,明日のスタンバイ開始時間を確認(6時).それに合わせた起床時間は5時20分.余震の続くなか,寝袋などで暖をとりつつ21時には全隊員が就寝です.

通信手段,燃料補給,SCUのあり方・使い方,大きな大きな課題です.