2011年3月29日火曜日

3月29日 本格稼働!

初療もICUもドクターヘリもそれなりに忙しくしております.ん〜,なんだか休憩出来ませんね・・・

今朝,ドクターヘリが格納庫から「初出勤!」.準備もしやすく,空港までの移動などミッション以外のことを考えなくても良いのは非常に楽です.格納庫,給油施設が整い,いよいよ豊岡ドクターヘリが何の足かせもなく本格稼働開始です!!

本日のドクターヘリは小林,松井先生,米田看護師.松井先生は1日8件出動のタイトルフォルダー.平和な運航になるはずもなく・・・

☆ドクターヘリ1件目 突然の意識消失

覚知同時要請です.「トイレ内で突然の意識消失.」 お昼前にドクターヘリは出動です.ドクターヘリは10分もかからずランデブーポイントに到着.数分後に救急車がやってきます.

「救急隊現着時,脈拍30〜40,ショック状態でした.今は意識も戻って,循環安定しています!」 救命士さんからの的確な申し送りを受けながら診療開始です.ABCD OK.心エコー問題なし.胃切除の既往あり.心大血管系の疾患は考えにくい状況です.排便時の意識消失,徐脈.迷走神経反射などを考え,松井先生が救急車同乗で直近の2次病院へ搬送です.

小林,米田看護師,運航スタッフはランデブーポイントで他事案要請に備えて待機.要請があれば松井先生は置き去りになっちゃいますが・・・


☆ドクターヘリ2件目 交通外傷(傷病者2名)

1件目から帰投し束の間,2件目の要請です.「複数の車が絡む事故.」 複数傷病者の可能性があります.機内ではトリアージタッグの準備.5分で現場上空に到着です.

指定されたランデブーポイントから事故現場まで支援車で10分はかかります.上空から救助事案であると判断出来ます.1分1秒も惜しい.上空から現場直近の着陸可能地点を検索・・・あります,安全に着陸可能な場所が!地上の救助隊に無線連絡,地上からも安全を確認してもらい現場直近の土手に着陸です.


「ヘルメット装着し,現場までダッシュ!」 着陸地点から現場までは約100m.資機材を担いで現着.救急覚知から20分以内に外傷初期診療の開始です.


傷病者は2名.1名はすでに救急車内に収容済み.1名はちょうど車外救出されたところです.松井先生が救急車内の患者さんを,小林は救助された患者さんを診察します.幸い,救急車内の患者さんは大きな外傷もなさそうです.直近の病院へ救急車で搬送とします.閉じ込められていた患者さんは胸部外傷が疑われます.であればヘリでTECCMCへ搬送.

現場から直近に着陸したヘリ機内へ速やかに搬入,TECCMCへ!

複数傷病者に2 flight doctor制は非常に有効に機能します.また,安全に現場直近に着陸させていただいた消防本部に感謝です.最短の外傷初期診療開始と搬送時間の短縮が実現しました.

☆ドクターヘリ3件目 窒息

2件目の患者さんを初療へ搬入,申し送りの最中に要請です.「食事中の意識消失.」 ヘリは10分でランデブーポイントに到着です.

救急隊からの情報では食事中の窒息,CPA.口腔内吸引,特定行為の気管挿管後に心拍再開,とのこと.窒息,低酸素からのCPAのようです.心停止時間23分.脳蘇生の可能性は?自発呼吸は再開しています.しかし,意識レベルはE1VTM1.TECCMCへ搬送して精査です.

救急車内から10分以内にヘリへ乗せ換え離陸,初療へ搬入します.

痙攣出現,NH3 40,INVOS R/L 81/82.脳蘇生は出来るでしょうか・・・

☆ドクターヘリ4件目 胸痛

3件目の患者さんを初療に搬入,またまた申し送りの最中に要請が入ります.「1時間続く,胸痛.」 もし心筋梗塞なら診断,治療開始までの時間が勝負です.だから覚知同時要請.

ヘリは数分で消防分署前のランデブーポイントに着陸です.支援隊の到着も分署前なので最速,散水も終了しています.


待つ事数分,救急車がランデブーポイントへ滑り込んできます.患者さんの胸痛は楽になっているようですが,速やかに心エコー,心電図の検査を行います.急性心筋梗塞が否定出来ません.であれば,一番近いTECCMCへ搬入して精査です.

☆ドクターヘリ5件目 アナフィラキシーショック

4件事案出動中に重複要請です.覚知同時要請であるため,患者さんを待たせる時間は最短になるはずです.こんな瞬間にもキーワード方式・覚知同時要請の効果が発揮されます.

4件目の患者さんをホットローディングのままヘリポートで日勤責任者の幸部先生へ引き継ぎ,フライトスタッフは再び機内へ.そして指定されたランデブーポイントへ向け離陸です.

飛行中にいつものように情報が無線で入ります.「食事後,全身の発赤,かゆみ,全身倦怠感.」 アナフィラキシー!?これこそ早期医療介入が救命を左右することがあります.

10分でランデブーポイント着陸.待っていた救急車内で診療開始.救急隊現着時,ショック症状があったようです.全身の発赤,粘膜の浮腫も若干みられます.幸い,今は呼吸,循環も安定しつつあります.やはりアナフィラキシー.エピネフリンまでは必要なさそうですが,ステロイド,H1&H2 blockerを投与,初期治療を開始します.

状態が安定しており,直近の拠点病院へヘリ搬送です.いつもお世話になり,ありがとうございます.

☆ドクターヘリ6件目 脳卒中(疑い)(離陸後キャンセル)

5件目から帰投し,初療でたまったカルテを記載しようとフライトスタッフ3名が座ったところ・・・要請の一斉PHSが鳴ります.

覚知同時要請.運航範囲全体にキーワード方式同時要請が徹底されていることを実感します.情報からは脳梗塞が疑われます.離陸後約5分,「キャンセル.」との無線連絡が運航管理室から入ります.どうやら様々な状況からヘリ適応にならなかったようです.

救急隊現着後にヘリ適応でないと判断されたキャンセルは大歓迎です.とにかく覚知同時要請で医療スタッフを早期に患者さんのもとへ出動させる事の方がもっともっと大切なことなのです.



本日は6件要請,6件出動.全ての事案がほぼ連続出動の状態でした.適切にヘリ要請をかけていただきありがとうございます.重複要請でキャンセル事案が出ず,本当に良かったです.引き続きよろしくお願い申し上げます.



気がつけば3月ももう終わるのですねえ.春はすぐそこまで来ています.