2012年4月8日日曜日

4月8日 約束


快晴!気持ち良く朝の点検終了.明るい日差しがJA822Hドクターヘリに降り注ぎます. 








今日のヘリ番は小林,前山先生,林田看護師.朝はヘリ要請もなく,病棟回診,病棟業務に勤しみます.ICU/HCUは相変わらず大繁盛.院内各病棟に協力していただき,何とか空きベッドを確保.救急不応需率ほぼ0%はこんな協力体制があるからこそです.感謝m(_ _)m

指示出し,カルテ書きも一段落した直後にヘリ要請の一斉PHSが鳴ります.思えばこれが全ての始まり・・・

☆ドクターヘリ1件目
覚知同時要請.
要請内容:墜落

ランデブーポイント着陸後に医療スタッフは現場へ.現場活動中の救急隊と接触,外傷初期診療開始です.その時,現場活動中に携帯が鳴ります.「別事案要請です・・・」 重症頭部外傷,きちんと初期診療を行いつつヘリ搬送!

☆ドクターヘリ2件目
覚知同時要請
要請内容:転落

1件目の患者さんをホットローディングでTECCMCへ搬送し,2件目の事案へ.救急隊は現場から少しでもTECCMCへ近いランデブーポイントへ移動してくれてます.外傷は全てTECCMC搬送なので,ミッション構築はやりやすい地域です.

☆ドクターヘリ3件目
覚知同時要請
要請内容:バイクとバスの衝突

これは本当にヤバそうと判断し,機内でいろいろ準備.現場上空へ到着すると同時に,「初期評価,全身観察問題なし.ヘリはキャンセル.」の無線.機内に安堵の空気が流れます.まずは救急医を現場に引っ張りだす.そして不要なら遠慮なくキャンセル.ドクターヘリは救急医療システムの1手段という認識が浸透している地域です.

☆ドクターヘリ4件目
救急隊現着後要請
要請判断基準:呼吸,循環の異常から搬送中の治療が必要

救急隊の的確な観察,評価に基づく要請です.当MC協議会で一番重要視していること.それは「観察→評価→処置→再評価」を的確に行うこと.それがなされた事案です.喘息発作にテオフィリン中毒.治療しながらの搬送です.

☆ドクターヘリ5件目
覚知同時要請
要請内容:急に倒れた

脳卒中疑いです.脳梗塞なら「時は脳なり」.血栓溶解療法の適応判断と時間短縮,これが我々の仕事です.ランデブーポイントで救急隊とドッキング,幸いにもCPSS, KPSS共に軽快しています.ちょっと一安心・・・と思いきや,別事案要請です!本事案の患者さんは救急隊だけで直近の病院へ搬送をお願いします.

☆ドクターヘリ6件目
覚知同時要請
要請内容:転倒し嘔吐

5件目のランデブーポイントから6件目のランデブーポイントへ.そして支援車にピックアップされ現場投入です.現場から外傷初期診療開始.やはり意識状態が悪いか・・・迷わずTECCMCへ.ヘリポートからdirect CT,「あっ!!これは!!!」もう少し搬入が遅ければヤバい状況に.初療でしっかりと安定化し緊急手術へ.ヘリが後遺症軽減に寄与するであろう事案です.

☆ドクターヘリ7件目
覚知同時要請
要請内容:意識レベル低下

ランデブーポイントで通常通りに救急車とドッキング.ドッキングから離陸まで10分もかかりません.現場からの医療介入に家族説明.通常のミッションです.

☆ドクターヘリ8件目
覚知同時要請
要請内容:意識レベル低下

ランデブーポイントで通常通りに救急車とドッキング.すると別事案の要請が入ります.どうやら別事案の状態が悪そう?そんな感じです.であれば,本事案は速やかに搬送.救急隊も慣れたもの.状態が安定していることをさっと確認し,機内へ.機内でルート確保しつつTECCMCへ.TECCMCのヘリポートでホットローディンの引き継ぎ.JA822Hドクターヘリは夕焼けの空へ舞い上がります.

☆ドクターヘリ9件目
覚知同時要請
覚知内容:急に倒れた

詳細は入ってきませんが,かなり救急隊は焦っている模様.どうやら「ショック」のようです.一体何のショック??と考えつつ輸液などの準備.ランデブーポイントで救急車に乗り込み診療開始.病歴を聞くと,スノーボードで数時間前に転倒,左側胸部を打ったとのこと.その後の帰宅中に突然倒れたとの情報です.そんな情報を聞きつつ初期診療・・・気道開通,努力様呼吸,頻呼吸,冷感著明,湿潤あり,頸動脈で脈は微弱に触知,そしてFAST ドpositive!!これはヤバい,心停止一歩手前です.末梢ルートを16Gで確保,輸液開始,そして機内へ.機内収容し,TECCMCホットラインを鳴らします.「腹腔内出血,ショック,ERLの準備,緊急輸血の準備,岡先生,永嶋先生スタンバイ,三浦先生も呼び出し!」ヘリは離陸,飛行中に経口気管挿管,そしてもう1本末梢ルートを確保.しかし,頸動脈は徐々に弱くなります.やばい!開胸してクロスクランプか,と同時にTECCMCへリポートへ着.と同時に別事案要請.ホットローディングでこの患者さんを小林がそのまま初療室へ.前山先生だけが次の事案へ.要請終了時刻ギリギリの離陸です.

☆ドクターヘリ10件目
覚知同時要請
要請内容:呼吸困難

一番近いランデブーポイントへ.飛行時間は30秒.そして支援車で現場へ.救急車で10分以上搬送にかかる地域外は全てヘリ対応.10分圏内はドクターカー対応.全ては消防の判断.頼りになる消防本部です.前山先生は今センターで起こっているであろう事態を考えつつ現場対応.そして搬送.


ドクターヘリが最終要請対応中,TECCMCの初療では・・・

ヘリポートから初療へ搬入する間にPEA.胸骨圧迫しつつ初療室へ.初療室では岡先生がすでに清潔になっており,手術室スタッフもスタンバイ済み.止血さえ得られれば必ず心拍は再開します.まだ心臓は動いています.受傷機転,身体所見から脾損傷が強く考えらられる状況.開胸してクロスクランプもありですが,うちは一気に止血が得られる視野を展開します.crush laparotomyそして横隔膜下,小網越しに下行大動脈を脊椎に押しつけてクランプ.そのまま腹腔内の4ポイントにガーゼパッキング.輸液,緊急輸血でボリュームを一気に入れて・・・心拍再開!初療搬入から心拍再開までは約3分.2年で良い外傷治療チームに成長したものです.後はmassive transfusion protocolで輸血を行いつつ完全止血術完了.


次の日,無事に抜管された患者さんに,「ちゃんと救急車の中で助かるって約束したでしょ.約束は守ったよ.」その言葉に親指を立てて笑顔で応えてくれました.初療搬入時の予測生存率は約8%.また元気にスノーボードをするそうです.救急医が一番嬉しく,疲れを忘れる瞬間です.


気がつけば,ヘリ要請12件,出動10件でした.重複要請でヘリの出動が出来なかった2事案はドクターカーが対応しています.空から陸から救急医が患者さんのところへ駆けつけます.それをしっかりと有効活用している消防本部.これからもさらにブラッシュアップして,地域に貢献出来ればと思います.よろしくお願い申し上げます.


本日のおまけ画像は・・・

小高い丘の上のヘリポート.
芝生化されるそうです.

もうすぐ桜咲く公園.
心地よい風が吹いています.