☆ドクターヘリ1件目 急性硬膜下出血・脳内出血
前山先生のデビューフライトは施設間搬送です.他院からTECCMCへ.
依頼元病院の直近ランデブーポイントに着陸して,患者さんの到着を待ちます.やや緊張した面持ちの前山先生とベテラン・清水フライトナース.
待つこと10分.救急車がやってきます.前山先生は前ドアから,小林は後ろドアから救急車内へ.と同時に小林は依頼元病院の先生から申し送りを受けます.その間に前山先生は速やかにABCDの評価・・・TECCMCへ急いだ方が良さそうです.
患者さんを速やかにヘリへ搬入,そしてエンジンスタートと同時に薬剤投与,そして離陸と共に十分な鎮静下にエアウエイスコープを使用して気管挿管です.ヘリ内での処置により約10分の搬送短縮.確かな技術と確実な道具があればこそのミッションです.
無事,ファーストフライトを終えた前山先生は安堵・・・する間もなく次の要請です.
☆ドクターヘリ2件目 急性冠症候群(疑い)・心不全
今後は開業医さんから,消防を通じての施設間搬送の依頼です.搬送先はフライトドクターの現場判断として,ランデブーポイントへ向かいます.
緊急の心カテが必要か?緊急の治療が必要か??現場で瞬時に判断しなければなりません.
ランデブーポイントへ着陸.同時に救急車も到着.救急車内へ乗り込んで診療開始です.気道は開通,呼吸はやや速いですが,酸素化は問題なし.循環は・・・末梢に冷感あり,冷汗もあります.12誘導心電図をチェック.虚血を示唆する所見はありません.どうやら基礎にある心疾患が影響しているようです.今後のことを考え,直近の拠点病院にお願いします.
快く応需してくださり,ヘリで搬送先病院の近くまで搬送,そこから救急車に前山先生同乗で搬送です.
前山先生は他院搬送も経験しました.そして・・・
☆ドクターヘリ3件目 バイク事故・顔面外傷
2件目の搬送途中に3件目の要請です.2件目の患者さんを前山先生と共に降ろし,救急車へ乗せ換えます.と同時にドクターヘリは小林,清水看護師を乗せ,離陸,3件目に向かいます.2 flight doctor制の強み発揮です.
10分でランデブーポイントへ到着.
その3分後に救急車も到着です.救急覚知から25分で外傷初期診療開始.病院搬入まで40〜50分かかる地域です.推定医療介入短縮時間は約40分.これも消防が覚知同時要請を徹底している賜です.
救急車内の患者さんは顔面外傷,特に上顎,下顎に損傷を負っており,口腔内に血液貯留が!このままでは気道の問題が生じます.吸引,ガーゼ圧迫などで何とか止血を得,ヘリへ搬入します.ここまで7分.そして,一番近い救命救急センターへヘリ搬送です.
ちなみにこのミッションの間,前山先生は2件目の搬送先病院から自力でTECCMCまで帰ることになっています(前山先生の談:「置き去りミッションのマニュアルを読んでおいて良かったです.」).
☆ドクターヘリ4件目 意識障害
無事,TECCMCへたどり着いた前山先生.やっと安堵・・・とはいかず,4件目の要請です.
救急隊現着後の要請.覚知内容ではキーワードに引っかからなかったようです.ヘリは7分でランデブーポイントへ到着.救急車とドッキングします.
救急車内で,救急隊の情報を聞きながら診療を行います.気道開通,呼吸問題なし,循環も安定していますが,意識は清明ではありません.低血糖なし.麻痺もはっきりしません.現場ではこれ以上,診断をつけようもありませんし,その必要もありません.脳血管障害,代謝障害などを疑い,TECCMCへヘリ搬送です.
画像,採血検査の結果,やはり思った通りの結果となりました.
☆ドクターヘリ5件目 交通外傷
怒濤の4件出動を終え,一段落していたところに要請です.覚知同時要請.ヘリ離陸と同時に無線で要請内容を確認します.「軽乗用車の事故.閉じ込め.意識なし.」
出来るだけ早い医療介入が必要そうです.ヘリはすぐに現場上空へ到達,直近で降りられる場所がないか探します.
あります!近くの会社の駐車場.支援隊が現場から走ってきてくれます.安全を確保,上空からも安全を確認,着陸です.そして医療スタッフはいつものように,ヘルメットを着用し10kg近い資機材を担いで現場までダッシュ!!
(救出後の車両写真です)
医療スタッフが現場に着くと,まだ患者さんは救助中.もうすぐ車外救出が完了するような状況です.小林,前山先生,清水看護師は救出後の診療が可能な場所へ移動します.そして,そこへ救急隊,救助隊が患者さんをそこへ搬出します.事故現場で外傷初期診療開始.救助事案であっても受傷から20分で医療介入が実現しています.患者さんは「不穏」,これはやばい兆候かもしれません.気道,呼吸,循環が安定していることを確認,速やかな搬送にうつります.全脊柱固定し,土手を舟形担架で担ぎ上げ,救急車に収容し,直近のヘリ臨時着陸場まで移動,そしてヘリ搬入.外傷初期診療開始からヘリ搬入まで10分.非常に速い現場活動が実現しています.
消防との顔の見える関係が,このような現場活動を実現させることをあらためて実感しました.
初めての事故現場を体験した前山先生は,「メッチャ速かったッス!これが病院前救急診療なんですね!!この地域で患者さんが助かる理由がわかりました.」 これに満足せず,まだまだ進化していきましょう.
なかなか充実したヘリ番でした.
院内では岡先生が三浦先生に心囊ドレナージを指導.ICUもなかなかバタバタしています.