やはり「魔の木曜日」でした・・・
☆ドクターヘリ1件目 心肺停止
(担当:小林,倉橋先生,林看護師)
開業医さんからの救急要請で,ドクターヘリも同時に出動です.飛行中に別事案要請.状況を無線,CS経由などで確認し,ミッションプランを練ります.
1件目の事案は倉橋先生のみで対応.機内で必要物品を倉橋先生に渡し,指定のランデブーポイントに着陸,倉橋先生だけ降ろしヘリは離陸します.その数分後,倉橋先生は支援車にピックアップされ現場へ.救急車に乗り込み,治療しながら直近の病院へ搬送です.
☆ドクターヘリ2件目 転落・頭部外傷
(担当:小林,林看護師)
覚知同時要請.だから時間的な余裕もあり,今回のようなミッションが可能になります.覚知から24分で外傷初期診療開始.そして覚知から38分後にはdirect trauma CT.
学校関係者の方々が可能な限り散水して下さいました.
暑い中,ご協力に心より感謝申し上げます.ありがたいことです.
現場からTECCMCまでは救急車で30分以上かかります.要請を行う消防の意識の高さが表れています!
☆ドクターヘリ3件目 意識障害
(担当:小林,林看護師)
覚知同時要請.「倒れている.呼びかけ反応なし.」との情報です.ヘリでも15分かかる地域.ところが離陸と同時に別事案の要請です.ランデブーポイントの場所,要請内容を加味し,ミッションプランを考えます・・・
「ドクターカーを出動!岡本先生を乗せて!!」無線でTECCMCへ指示します.ミッションプランは,3件目を対応している間にドクターカーが4件目の現場に到着,患者接触するはず.診療しランデブーポイントに向かうころに,ドクターヘリが上空に到達可能,搬送はヘリでTECCMCへ.これが最速の医療介入と最短の搬送になります.さて,実際は・・・
ドクターヘリはランデブーポイントへ着陸,救急車内で診察を開始.確かに意識状態は悪い!原因は??「血糖30!」林看護師からの報告.50%ブドウ糖を投与,するとみるみる意識レベルは回復します.低血糖だったようです.幸いにもABCD全てがクリアされ,搬送は救急隊にお願いすることとします.いつもありがとうございます.
そして,目論み通りドクターヘリはドクターカーが向かっている4件目の事案へ離陸します.
☆ドクターヘリ4件目 パラグライダー墜落(重症外傷)
(ドクターヘリ担当:小林,林看護師,ドクターカー担当:岡本先生)
3件目のランデブーポイントから本事案のランデブーポイントへ.するとそこにはドクターカーの姿が!岡本先生による外傷初期診療が開始され,救急車が事故現場からランデブーポイントへ向かっています.まさに狙い通りの展開!
ヘリはランデブーポイントへ着陸,と同時に救急車も到着し,速やかに患者さんをヘリへ搬入しTECCMCへ.覚知から医療介入開始まで約30分,TECCMC搬入まで約50分.救急車なら覚知からTECCMC搬入まで1時間以上かかっているところです.
ドクターカーで出動した岡本先生もヘリに乗り込みTECCMCへ.重症外傷が疑われ,primary surveyをクリアさせるためにTECCMCの初療へ搬入です.
そしてこの後は長嶺先生がsecond flight doctorとして乗務することになります.まだ午前中,まだまだ出動するかも?
☆ドクターヘリ5件目 意識障害(脳幹梗塞)
(以後の担当:小林,長嶺先生,林看護師)
救急隊現着後の的確な要請です.覚知内容はキーワードに引っかからず.どうやら症状が進行しているようです.
ランデブーポイントで救急車とドッキング,診療を開始!ABDに異常あり!!低血糖なく,脳血管障害が疑われます.二次性脳損傷を防ぐべく,迷わずdeep sedation下に緊急気管挿管.そしてヘリ搬入.ドッキングしてからここまで10分.無駄な時間はありません.
そして患者さんでごった返すTECCMCの初療へ搬入です.
☆ドクターヘリ6件目 施設間搬送
TECCMCから大学病院高度救命救急センターへ施設間搬送です.救急医同士,本当に話は早い!迅速な対応に感謝申し上げます.
ヘリ機内でもモニタリングを行い厳密な循環管理.
搬送時間の長い,重症症例では非常に有用です.まさに空飛ぶICU.
☆ドクターヘリ7件目 川への転落
覚知同時要請です.救急隊現着後,軽症を確認,出動後キャンセルとなりました.
☆ドクターヘリ8件目 交通外傷
7件目に飛行中に重複要請です.もちろん覚知同時要請.7件目のキャンセル後に迅速に本事案のランデブーポイントへ向かいますが,幸いにも救急隊現着後軽症を確認し出動後キャンセルとなりました.
救急医を現場に引っ張り出そうという意識が高い,すばらしき地域です!
☆ドクターヘリ9件目 意識障害(熱中症)
ランデブーポイントで救急車とドッキング,通常のミッションです.やはり熱中症,増えてきました・・・
☆ドクターヘリ10件目 交通外傷・心破裂
9件目の対応中に重複要請です.9件目の患者さんをヘリポートで引き継ぎ,離陸です.事故現場は救急隊現着までもヘリ到着までも時間のかかる地域です.情報を収集しながらランデブーポイントへ向け飛行します.
20分後,ランデブーポイントで救急車とドッキング.救急隊からの第一声は,「先ほどPEAに移行!!CPR開始しています!!」 救急隊の目の前での外傷性CPA.外傷初期診療を最速で長嶺先生と行います.血管は虚脱しており末梢ルートの確保は困難,では橈骨遠位端にBIGでIOI施行です.あっという間にルート確保し薬剤投与.長嶺先生は気管挿管を行います.
FASTで腹腔内出血を疑う所見あり.頭部外傷は明かなものはなさそうです.体幹部外傷がメインと判断.ということは出血か閉塞性の機転がCPAの原因か!であれば救命の可能性も0ではありません.
「林,開胸するよ!」林看護師はセットを展開します.その間にイソジンをかけ手袋を履きます.左開胸そのまま胸骨切開し右開胸へ.emergency field clamshell thoracotomy.クロスクランプをかけ,pericardiac sacを切開すると血液が流出してきます!「心破裂!!TECCMCでこのまま手術,連れて帰ります.長嶺先生,初療室開胸と緊急輸血の準備を連絡して!」
救急車からヘリへ患者さんを乗せ替え搬送準備です.治療開始から12分.気管挿管,BIGによりIOI,開胸・クロスクランプ・・・まあまあの現場滞在時間ですが,重症外傷は1分1秒が大切な時間です.
輸液ルートをさらに確保するために,飛行中の機内で鎖骨にBIGでIOI施行.2ルート確保しTECCMCの初療へ搬入です.
あとは番匠谷先生,幸部先生,吉山先生に手術を任せます・・・
初療室開胸.道具と共に手術室の看護師さんが来られます.
直介は手術室看護師さん,蘇生は救命看護師さん.まさにチーム医療!
終わってみれば10件出動と最多出動件数となっておりました.ドクターカーの有効活用もあり,病院前救急診療の方法が学べた1日でした.
本日も多くの方々にお世話になりました.その甲斐あって,患者さんにとって有意義な救急医療を提供することが出来ました.感謝申し上げます.10件出動もまだ余裕はあります.どうぞ,遠慮無く有効活用して下さい.今後ともよろしくお願い申し上げます.