2011年4月7日木曜日

4月7日 トンネル内車両火災,そしてDMAT待機

再び宮城県沖で震度6強の地震が発生しました.豊岡でも震度1.仕事が終わって外食中に「なんだか揺れる?」と思いiPhoneでネットをチェック.すると「宮城県で震度6強の地震」との表示.DMATの待機基準に入ります.状況によっては翌朝ドクターヘリを再び被災地へ飛ばす可能性もあります.救命救急センターの医局に戻るとDMAT隊員が集まり始めています.数人は夜勤中.医局内でテレビ,ネット,EMISで情報を集めつつ出動に備えます.幸いにもDMATの待機要請は解除になり,参集した隊員は自宅待機とします.いったいいつになれば被災地の方々が安心して生活出来る環境になるのでしょうか・・・1日も早い復興を心からお祈りいたします.



本日のドクターヘリ・カー担当は小林,三浦先生,林看護師.天候に問題はありません.

☆ドクターヘリ1件目 胸部苦悶・急性冠症候群

覚知同時要請です.「胸痛,ショック状態.」 機内では輸液,十二誘導心電図,薬剤の準備をします.ランデブーポイント着陸し,程なく救急車も到着.覚知同時要請ならではのタイミングです.


救急車内で診療開始.輸液開始.心電図では虚血性変化ははっきりしません.既往に心筋梗塞あり.血圧は低め.眼瞼結膜は貧血気味.もしかすると消化管出血からの2次的な冠動脈の虚血?いずれにせよ救命救急センターへの搬送が適切と判断し,現場から一番近い救命救急センターへヘリ搬送.

幸いにも機内で状態は安定化し,落ち着いた状態で引き継ぎが出来ました.医療介入の短縮時間は30分以上.早期医療介入と搬送時間の短縮が得られました.

☆ドクターヘリ2件目 ショック・解放骨折

労災事故.救急隊現着後にショック状態と判断されドクターヘリ要請です.現着後要請のため,ランデブーポイントで数分,救急車に待ってもらいました.

救急車内で初期診療開始.輸液で循環は安定します.意識もしっかりされてきました.

解放骨折の緊急手術対応をお願い可能な病院を生活圏,現場の場所などから選定です.平日の夕方.当直帯に入っているため,なかなか応需に時間がかかります.院内のホットラインたらい回し.人の振り見て何とやら・・・我々も救急隊の応需には出来るだけ短時間で速やかに応じなければと反省します.

何とか担当科の先生に連絡がつき応需していただきました.ありがとうございます.搬送先はドクターヘリが初めて降りる消防本部.運航管理室が調整し,着陸地点も設定されます.

10分もかからず搬送先病院直近の着陸地点に到着,救急隊に患者さんを無事引き継ぐことが出来ました.本来であれば三浦先生が同乗し搬送すべきなのですが,選定に時間を要したため日没間際となってしまい・・・消防の皆様にはご協力いただき誠にありがとうございました(昔,某救命救急センターで勤務していた際にご一緒させていただいた方もおられ,知ったお顔があると安心いたします).


☆ドクターヘリ3件目 交通外傷・トンネル内車両火災

日没も近づき,2件目からの離陸直前に要請です.「トンネル内で事故.複数傷病者.車両火災発生.救助中.」との要請内容です.

機内には一気に緊張が走ります.まず現場は?TECCMC帰投の途中,時間的には医師の現場投入は可能.複数傷病者?トリアージタッグの準備,資機材.資機材が足りなければ消防から借りよう.トンネル内火災?ヘルメット,マスク,皮手袋,安全確認・・・一番の問題はランデブーポイントから現場まで距離があること.場所的には支援車の到着に時間を要することでしょう.また,事故形態からヘリ支援に人を避けない可能性もあります.ならば現場直近で着陸,現場の消防の方に直接安全管理をお願いしましょう.

ヘリは全力で現場へ・・・上空から現場のトンネルを確認します.南側,煙は出ていません.南側の消防本部から救急車,消防車などが出動しています.しかし,着陸に適した場所がありません.北側は?トンネル出口から煙が出ています!おそらくは現場は北側からの方が近いようです.北側の消防本部からも救急車,消防車がすでに現場到着しています.

「トンネル出口付近の休耕田に着陸可能.時間的に厳しいので医療スタッフを降ろした後にドクターヘリは帰投します.」と機長からの指示.医療スタッフはその旨了解し,準備をします.

「ドクターヘリ,トンネル出口付近の休耕田に着陸します.地上支援お願いします.」無線で地上の消防の方に連絡,許可をもらいます.


資機材を担いで現場入り口へ.消防の指揮官に医療スタッフ到着したことを報告し,今後の現場活動の方針を確認します.ドクターヘリは日没間近でありTECCMCへ帰投.

我々はトンネル内の火災が消火され,安全にトンネル内で現場活動が可能になった段階で救急車に同乗し進入することとなります.


「消火完了!救急車で進入!!」 医療スタッフは2台の救急車に分乗しトンネル内へ.


傷病者は3名.1名はすでに南側のトンネルの外へ自力で出ているようです.その方は南側の消防本部に搬送をお願いします.他の2名は?小林,三浦先生で各々の外傷初期診療を開始.1名は胸部外傷,1名は大腿骨,上腕骨骨折.トリアージは「赤」と「黄」にします.患者さんの住所,状態から2人ともTECCMCへの搬送を決定.2台の救急車に小林,三浦先生が分乗,連なって走ります.そして,TECCMCへ到着.待ち構えていた岡先生,前山先生とともに外傷診療を継続です!

全てが落ち着き,片付けが終了すると外はすっかり暗くなっていました.



そして,この夜は初療がお祭り.30分で救急車が5台搬入されたり,何かとバタバタしていました.皆様,お疲れ様でした.