2011年2月6日日曜日

2月6日 ヘリの運航力

今日は朝から霧.ヘリが当院のヘリポートに来られません.本日のドクターヘリ・カー担当は小林,松井先生,藤巻看護師.準備だけは抜かりなし.そんな中・・・

☆ドクターカー1件目 意識なし

朝のカンファレンス中に要請です.松井先生はカンファレンス室から駆け出します.ヘリの補完のドクターカー.この季節大活躍です.カンファレンス参加者全員で見送り・・・しばらくすると,「救急隊現着時,カー不適症例にてキャンセルでした.」と松井先生が帰ってきました.さて,引き続き申し送りをしてくださいね.

ドクターカードクターヘリ1件目 骨盤骨折 出血性ショック

回診中にドクターカーの要請です.松井先生は3階のICUから階段をダッシュ!藤巻看護師と共に出動です.その直後,運航管理室からの一報,「但馬空港からは離陸可能になっています.カーの出動場所はスキー場なので,ヘリを飛ばしますか?TECCMCへの着陸の保証はありませんが・・・」 小生は迷わずヘリ出動を指示します.スタッフと共に但馬空港へ乗用車で移動.ドクターカーで出動したばかりのスタッフも但馬空港へ向かわせ,ヘリでの出動へ切り替えます.

10数分後,医療スタッフ3名を乗せたJA822Hドクターヘリは但馬の空へ舞い上がります.病院の周りだけが霧.それ以外は ↓↓↓ こんな感じです.


10分後,スキー場麓の駐車場に着陸,救急車を待ちます.ミッションの時間的には,救急隊現着までの時間,スキー場から麓まで下ろして車内収容,ランデブーポイントまでの陸送時間を考えると,但馬空港からの出動でも間に合いました.

休日のスキー場駐車場は一杯です.その傍らの空きスペース,ここが今回のランデブーポイント!


程なく救急車到着.松井先生,藤巻看護師と車内へ乗り込んで外傷初期診療開始.意識朦朧,頻呼吸,冷感著明,橈骨動脈微弱,背中と腰を痛がっています.松井先生は瞬時に「やばい!!」と判断,2ルート確保し輸液開始.FASTはnegativeなので後腹膜臓器の損傷か骨盤骨折か!?速やかにヘリ機内へ収容しTECCMCへ搬送です.

搬送中の機内では輸液に反応し,循環が立ち上がってきます.primary surveyはクリア出来そう.ならば得意のヘリポートからのdirect trauma CTで一気に精査です.松井先生から日勤の岡先生,三浦先生へその指示が機内よりなされます.こんな連携の積み重ねが根治的治療開始までの時間を短縮するのです.

TECCMC着陸,そしてCT・・・腰椎破裂骨折,骨盤骨折,造影剤の血管外漏出あり!読み通り!!間髪入れずに血管造影からTAE.岡先生,番匠谷先生,お見事です!無事救命することが出来ました.

血液検査所見でかなりのアシドーシスを認めており,おそらく陸送であれば搬送中に出血性ショックから心停止に陥っていたと考えられます.これが消防の的確な早期要請とヘリの機動力・運航力により回避されました.ヘリが非常に有用であった事案です!

☆ドクターヘリ2件目 交通外傷

1件目搬入の患者さんの血管造影も終盤,後は確認造影のみ.そんな中,血管造影の操作室で治療の監督をしていた小生のPHSが鳴り響きます.

「乗用車3台の玉突き事故.赤の傷病者1名の対応をお願いしたい.」との情報で離陸です.事故現場を上空から確認し,ランデブーポイントへ.現場離脱した救急車も確認します.ヘリ,救急車共に同じような時間にランデブーポイントへ到着.離陸後,速やかに車内での外傷初期診療が始まります.


幸い呼吸,循環は問題ありません.「両手が痺れます.」との訴え.全脊柱固定のままTECCMCへ搬送です.

☆ドクターヘリ3件目 脳卒中

2件目の現場を離陸した直後に要請です.「脳卒中疑い.」との情報.ランデブーポイントはTECCMCへ向かう途中にあります.「松井先生,藤巻看護師を途中のランデブーポイントへおろします.診察上TECCMCへの搬送が必要であれば,2件目の患者さんをおろした後にピストン搬送で.」 2 flight doctor制ならではの運航です.

ランデブーポイントへ到着したドクターヘリから松井先生,藤巻看護師がおり,到着した救急車内へ.2件目の患者さんと小林を乗せたヘリは再び但馬の空へ舞い上がります.


救急車内で松井先生は診療開始.幸い呼吸,循環は安定.確かに麻痺はありますが,発症時間を考えると血栓溶解療法の適応はなさそうです.現場で医学的に判断,直近2次病院へ救急車同乗で搬送です.

松井先生,藤巻看護師,搬送後は自力でTECCMCまで帰院願いますm(_ _)m

☆ドクターヘリ4件目 墜落外傷

松井先生,藤巻看護師が無事帰院.しかし,息つく暇なく出動PHSが一斉に鳴ります.医療スタッフの3人はダッシュでヘリポートへ!

「年齢,性別不詳.川への転落.」との情報です.覚知同時要請.ヘリは5分少々でランデブーポイントへ着陸,そのまま支援車で現場に向かいます.これが覚知同時要請の利点,最短での医療介入開始です.

現場に到着すると,患者さんがちょうど救出され車内収容されるところ.びしょ濡れの衣類を裁断しつつ外傷初期診療を開始します.呼吸,循環,意識は問題なし.FASTもnegative.しかし,左股関節部に変形を認めます.骨盤骨折?大腿骨骨折?いずれにせよ,外傷はTECCMCへ.医療スタッフは救急車に同乗しランデブーポイントへ.

雪の残るグラウンドではストレッチャーが自由に操作出来ません.全員で患者さんが固定されたバックボードは抱えヘリ機内へ.離陸後機内をヒーターで十分に暖めながら搬送です.


TECCMC搬入後,やはり予想通りの結果でした.



本日はドクターヘリの運航力を見せつけられたミッションでした.これも消防の皆様の適切かつ早期からの要請があってこその成果です.

本日もご協力,ご支援いただき誠にありがとうございました.お疲れ様でした.