☆ドクターヘリ1件目
覚知同時要請.「川に転落,意識なし.」との情報です.外傷?内因性?機内ではどちらの対応も考え準備です.
現場近く無線で情報が入ってきます.「ユンボごと川へ転落.下敷き.現在,現場活動中.」 重症外傷のようです.ランデブーポイントに向かう途中に現場上空で現場の状況を確認.川の中州に人が倒れ,救急隊,救助隊が活動しているのが目に飛び込んできます.周囲を確認すると直近に着陸可能なスペースがあります.医療スタッフを最速で現場投入するにはそこに着陸するのがBESTと判断,安全を確認し現場直近に着陸です.
「ヘルメット装着,安全を確認し現場へ!」 医療スタッフ間で確認します.資機材を各々担ぎ,現場の指揮隊長のところへ.安全を確認し現場投入の指示を受けます.
傷病者は川の中州.川の堤防を約3mほどはしごで下り,水の中を中州へ向かいます.膝まで水につかると安全靴の中も水びたし.そんなことにはかまっておられません.
医療スタッフ現場到着.救急隊に状況を聞きながら外傷初期診療開始.PEA状態.原因は?IOIによるルート確保,気管挿管を行いつつFASTで原因精査.ドクター2人制だと現場でも病院内初療と変わらぬ早さで診療が行われます.FASTでは心嚢液貯留なし,腹腔内出血なし.しかし,後腹膜の血腫があやしい!胸部皮下気種,動揺なし,頭部外傷もなさそう.骨盤骨折,後腹膜出血に伴うPEAと判断します.時間的にも,病態的にもまだまだ可能性があります.
搬送を優先?しかし,堤防をつり上げるにあたって舟形担架に収容,2〜3分間は胸骨圧迫がとまってしまいます.また,出血を止めなくては心拍再開の可能制もなくなってしまうでしょう.
小林・岡先生の考えは瞬時に一致.「濱君,EFT準備!」 岡先生は迷いなく,院内同様に治療を開始.小林は救助隊と搬送方法,特に堤防つり上げ時の方法について協議します.「サティンスキー・・・遮断完了.心マ開始」と同時に岡先生の腰にハーネスが巻かれます.
搬送開始!舟形担架に乗せられた患者さんを救助隊が引っ張りあげます.そしてその横を岡先生も上からハーネスでつり上げられ,下から救助隊に支えられながら治療継続したまま堤防を上がってきます.
小林は機内準備.機内へ収容しそのまま岡先生から治療を引き継ぎます.岡先生は気道管理へ.加圧バッグでの輸液,薬剤投与,EFT.そして,TECCMCの初療では開胸,緊急輸血の準備が整っています.番匠谷先生,松井先生の待つTECCMCへ急ぎましょう!!
現場からのシームレスな外傷治療.決してあきらめず,BESTな治療を瞬時に選択.消防のしっかりとした覚知同時要請があるからこそ,最速の医療介入が開始されます.そしてそんな中鍛え上げられたTECCMC's flight team.この1年,確実にこの地域の救急医療,外傷診療が変わりました!