3月17日,第2陣の災害派遣,ドクターヘリ派遣を検討している中,兵庫県から救護班派遣要請がきました.1ヶ月以上にわたり,県の災害拠点病院,県立病院が順番で救護班として宮城県へ入るとの内容です.独自で向かうよりは,県からの派遣として現場に向かう方が良いと判断します.
3月18日,3月23日からの期間を当センターが担当したい旨,県に伝えます.
3月19日,正式に23日からの派遣決定.医局,看護部ともに勤務調整を行います.救命救急センターの勤務表改訂版を作成し,皆に配布します.留守を守る人達がいて,派遣される人がいます.災害時の派遣はこの協力体制があってこそ意義をなします.
3月21日,事前ミーティング.チームビルディングです.救護所のレイアウト,診療のながれ,災害時診療録,処方などについて話し合いを行います.診療録はエクセルファイルでの電子化を試みます.そして,資機材の確認,積み込みなどを空いた時間に派遣メンバーを中心に行います.
3月22日,まずは陸路で機材車が11時に出発,山形を目指します.業務調整員の薬剤師の方,事務の方が運転して出発です.
3月23日 4時に医療スタッフは伊丹空港へ向け出発.空いているスタッフで見送ります.
朝一番の山形臨時便で山形空港へ飛びます.そして,山形空港で前日入りしている機材車兼搬送車と合流し,陸路で宮城県石巻市へ向かいます.給油所は給油制限があります.
今回の支援場所は石巻市・鹿妻小学校避難所.お昼前に現地入り.被災状況を目の当たりにし,言葉を失います・・・
鹿妻小学校に到着.前派遣チームと30分少々での申し送りを行い,活動開始です.14時ごろから救護所での診療を開始し,19時ごろに終了です.
3月24日 以下,現地からの活動報告を転記します.
救護所の掃除から始まりレイアウト変更を経て2日目の活動は軌道に乗った印象を受けます.今日は17時に診察終了できました.
午前 53名受診(巡回患者含む) 歯科受診10名
午後 64名受診(巡回患者含む) 歯科受診4名
のべ131名受診 うち小児は約10名
他派遣病院の2名の医師と合同で3診開設.東北大歯科医師2名が本日のみ訪問診療.日赤からきた医師に往診を依頼.(これも本日のみ)
在宅で寝たきりで褥創を形成してしまった高齢者1名について,行政を交えて社会的支援の必要性を訴えたことで,石巻日赤訪問看護が入ることになりました(救護班介入終了).
当院救急車を使用して2名を石巻日赤へ救急搬送(上部消化管出血,高血糖・発熱).
1名を地元救急隊により石巻日赤へ搬送(寝たきりで肺炎疑い).
当救護所でフォローされていた自宅避難中の高血糖患者について家族より相談あり.紹介状を作成し119番対応.
資材,薬剤に関してはほとんど持参のものは使わずに現場にあるもので賄えています(前のチームがだいぶ資材をおいていかれました).
不足薬剤は宮城県,日赤を通して依頼できます.創洗浄が必要な患者さんは1日10名以下.点滴が必要な患者はおられません.点滴台は未使用のままです(事前情報とちがうような・・・).
「鹿妻小学校避難所情報」
避難者1035名 うち幼児30名,小学生66名,中学生25名,
外部支給者(自宅にいるが物資を受け取りに来る人)2967名
水:水道× 給水回数が増えており,米軍によるミネラルウォーターが大量に搬入されたため水不足はなし
食事:3食支給 火が使えないので暖かいものは炊き出しのもののみ
電気:○
毛布:1人1枚支給.全員に行き渡っています.
暖房:教室内避難者:なし 体育館避難者(ストーブあるが燃料不足のため,短時間のみ稼動)
衛生状態:トイレの手指消毒不足.手洗いできません.日赤に依頼し大量に搬入してもらい,各部屋,トイレに手指消毒を設置.仮設トイレは設置されており,掃除も当番制で行われています.汲み取りも業者が行っています.
3月25日 以下,現地からの活動報告を転記します.
本日から小児科チームも合流.Dr 5名体制で3〜4診を開設.折を見つけて巡回を実施.
さらに日赤救護班が派遣されてきて,別途1診を追加しました.
地域の方やアドホックでやってくる医療班から「体制が整っている」「整然としている」と,うれしいお言葉をいただきました.この言葉に浮かれることなく地域の方々にとって利用しやすい救護所運営の確立を目指して問題点の抽出と解決を目指していきます.
受診者総延人数:152名
午前61名(うち小児10名)
午後60名(うち小児9名)
眼科受診者:31名
救急搬送 けいれん,頻拍 合計2名
小児科医がメンバーに加わったこともあり受診者も10−20人程度であるため,小児科ニーズは満たされている.兵庫県チームには常に小児科医1名、小児科看護師1名が含まれることになった.上気道炎,腸炎,感冒症状がほとんど.余力がある際には小児科のDrに成人の診察も協力していただいている.かかりつけの産婦人科が流されてしまい妊婦さんが検診を受けることができないため心配していると相談もあった.
「鹿妻小学校避難所情報」
避難者1008名(救護所間を移動する者,親類など被災地外に身を寄せるため移動する者が出てきており,現象傾向にある)
水:水道× 自衛隊の給水があり,ペットボトルの支援もあるため飲料水には困らないが,洗濯や洗面に使うほどの余裕はない.自衛隊が除染ブースのようなシャワーテントを張り,久しぶりのシャワーを喜んでいました.明日以降は別の避難所に移動するので次回いつくるかは不明.
食事:3食支給 今日は昼に炊き出しがあり長蛇の列.
配給制の食事の場合は各ブロックのリーダーを介して食事が分配されるため,もらえない人はいないのだが,屋外での炊き出しに関しては寝たきりの人やADLの低い人は歩行困難であるため受け取りにいくことができないのでそこが気になる.
子供たちが素手で炊き出しのおにぎりをほおばる姿が目に付く.すかさず三浦先生と手指消毒を乗せた机を列の前方に移動し,拡声器を用いて食事前の手指消毒を訴えました.もちろん,炊き出しをしている組織の方に下痢嘔吐が流行しているため感染拡大目的で行うつもりであると説明をして快諾していただいた.
飲料水は確保できているが暖かい飲み物や食べ物があるともっといいのにという希望も強くなってきている.給湯器があればなあ・・・
電気:○
毛布:毛布はあまっている.昨日日赤が支給した「安眠セット」が大好評.避難所リーダーより皆に行き渡るように日赤にお願いしてくれと懇願され,日赤に対して要望した.
暖房:教室内避難者:なし 体育館避難者(ストーブあるが燃料不足のため短時間のみ稼動)燃料不足に対しては市,自衛隊に要望しているが補充なし.
衛生状態:トイレの手指消毒の問題は解決.ただ手洗いはまだできない状況にある.
そういった状況で素手でおにぎりをほうばる姿をみると黙っていられず,出席した15時からのリーダー会議にて,メディカルとして感染予防策について再度周知徹底させていただいた.明日は正しい手指消毒の方法について実演,体験をする機会を設けようかなと思っています.公衆衛生活動です.
「救護所周辺情報」
救護所運営は軌道に乗っているが避難所周辺の被災者に介入する余裕はない.震災後これまで受けていた訪問看護がまったくこなくなってしまった例がある.
本日の活動報告は以上です.
巡回診療へ
救急搬送
26日 救護所での最終診療日
診察待ち時間短縮のため処方のみの対象者,保健室までこれない避難者の往診を行うなど工夫をしている.そのため,初日は2時間待ちであったが待ち時間の短縮につながるようになった.
受診者総延人数:146名
午前69名(うち小児8名)
午後77名(うち小児10名)
救急搬送1件(高齢者の高熱,肺炎疑い)→119対応
受診者の主な主訴は、発熱、咳、咽頭痛などの感冒症状や嘔吐、下痢などの消化器症状がメイン.その他多くが処方薬がなくなったための処方希望。創傷処置は1日5-10件程度。思っていたほど需要はない。時折炊きだし準備の際にやけどをしてしまった方などもきている。また、埃っぽい場所で寝泊りされているため、アレルギー症状を呈する方も多い。アレルギー点眼薬がよく出ている。
インフルエンザ疑いに対してキットを用いて数名簡易検査を行ったが幸い陽性者はいなかった。一部の方に対しては予防投与としてタミフル、リレンザの処方がなされている。
また、被災後2週間が経過し、疲労が蓄積されているのかヘルペスを発症している方がちらほら出てきた。(この日は4名)
小児は手足口病の子が1名受診、多くの子は発熱、腸炎、喘息での受診となっており、昨日と変わりなし。小児用のディスポマスクのマスクの補充が必要。
夜間、救護班不在時の相談役や日中のケア介助などを担ってくれる日本看護協会の災害支援ナースが2名、避難所に投入された。救護班との連携を調整。潜在的な要治療患者の発見と救護所への紹介、ケア介助、褥創患者の処置介助などを行っている。避難者の夜間の不安軽減に一役かっている。ただ、2人で24時間体制とるとのことで、過労にならないかちょっと心配。
本日も日赤救護班1隊がやってくる。避難所内診療で手一杯になっており、避難所周辺住民への巡回ができていないので、周辺地域への往診を日赤救護班に依頼した。日々、違う救護班が応援に来てくれるのだが、日赤内の申し送りが不十分である印象を受ける。また、日赤スタッフとのコミュニケーション不足のため、一部誤った(認識違いや事実無根の苦情)情報を日赤本部に報告されたりとトラブルを生じた。この件に関しては小林センター長にも同日夜間に電話にて報告している。明日、現場離脱報告の際に、日赤災害対策本部GMの責任医師に事情を説明しにいく予定。災害時というのは皆気が張っており、口調により受け取り方が変わってしまったり、尾びれがついて誇張されてしまったりすることが多々あるようだ。コミュニケーションがいかに重要か思い知らされた。
業務調整員として15時からの班長会議に出席。手指消毒の必要性を全体で訴えつづけ、避難者の方々の協力も得られ、子供も含めてかなり習慣付いてきた印象がある。
皆さんの協力にお礼を言うと共に、感染拡大時期であり、継続が必要であることを強調。
次のステップとして、マスクの正しい装着方法、手指消毒の方法について、皆さんに体験してもらいながら学んでいただいた。リーダーの皆さんが各セクションに持ち帰り、伝達をされることになっている。帰り際、リーダーさんに反応を聞いてみると、特に女性の方なのだが、頻回の消毒が原因で手荒れを起こしてしまっていて、痛みで消毒できない方が出てきている。医療者も普段困らされている状況が現地でも起きてしまっている。ただ、保湿成分入りの消毒薬がすぐに入るとは限らない・・・・どうにかならないか・・・
定刻どおり診察終了。本日をもって県立淡路チームはミッション終了。当チームは明日の引継ぎ準備をして現場を撤収。石巻日赤のミーティングに参加。
「石巻圏救護体制」
→石巻圏合同救護チーム(日赤救護班、他組織の合同チーム)
28日より石巻圏を14ブロックに細分化。それぞれにブロック幹事が割り当てられる。鹿妻・渡波地区は長野赤十字病院救護班が幹事となる。兵庫県立病院グループ、災害拠点病院グループは鹿妻小学校救護所を引き続き担当する方針。ブロック内のニーズによっては変更の可能性もありえる。
「鹿妻小学校避難所情報」26日17時現在
避難者1013名(うち体育館467名) 5歳以下32名
外部登録者 1370名(260世帯)
水;昨日報告と変わりなし
食事:本日も善意での炊きだしあり。うどんやいも煮などが振舞われた。外部の方で乳幼児を背負っている母親をよく見る。離乳食について確認。一応、レトルトのものはストックされており、必要に応じて提供しているが、温める手段がない。
電気:昨日報告とかわりなし
毛布:昨日報告とかわりなし
暖房:昨日報告とかわりなし
衛生:本日雨雪のため校庭がぬかるみ、仮設トイレや校舎内の泥汚れがひどい。
本日も自衛隊によるシャワー提供有。
妊婦情報:外部の260世帯のうち、数名の妊婦さんがおられる。避難所内はなし。検診に対する不安有り。
26日の報告は以上です。
救護所内の様子
連絡掲示板です.これを見られて連絡があれば・・・
巡回診療
給水
今回ご一緒させていただいた兵庫県の医療班です.
27日 午前中に次の救護班に引き継ぎを行って,空路組は新潟空港へ陸路で移動.陸送組は明日の午後に豊岡到着を目処に出発です.
昨晩、仙台市内の秋保温泉公衆浴場にて入浴したこともあり、すっきりとした目覚めとなりました。
ただ、連日の長時間のミッションもあり、みんなの疲労が出てきているように思います。やはり救護班は3泊4日程度が限界なのでしょう。
本日は次に引き継ぐ姫循と西脇HPへの申し送りがわれわれのミッションです。各職種で申し送りを行います。実際に診察を行いながら最終確認。確認が行えたところでわれわれのミッションは終了です。
避難所本部へ現場離脱の挨拶を行います。運営が軌道に乗り本部スタッフともよい関係が構築できた頃に現場離脱しなければならないのはつらいものです。
本部リーダーを務めているPTA会長の一條さんが「ずっといてくれればいいのに」と声をかけてくれたことが私たちのミッションに対する評価だと受け取りたいと思います。
10:10現場離脱。
石巻日赤へ離脱報告と昨日のトラブルに対する確認と説明に伺う。要はコミュニケーション不足が問題の発端ということでお互い気をつけましょうということで落ち着きました。
途中、石巻港周辺を経由して、被災状況のひどさを目の当たりにしました。12時すぎ、石巻を離れました。
17時すぎに新潟空港着。倉橋Dr,三浦Dr,毛戸Nsを降ろす。18時半のフライトにて伊丹へ移動予定。
陸送班、大垣ph、藤田は本日の宿泊地上越市へ移動。
ホテルにて夕食、入浴を済ませ、報告書も作成せず爆睡。
2日分の報告をためてしまい後悔・・・
23時に空路組が病院着。その頃、私は夢の中。
明日の運転に備え体を休めます。
27日の報告は以上。
1日も早い復興を心よりお祈りいたします.
但馬4消防本部の1つ,朝来市消防本部からも応援に来られています.
23時前,空路組がTECCMCへ無事帰ってきました.大変お疲れ様でした.ゆっくり休んでください.
28日 16時 陸送班が無事到着.本当に本当にお疲れ様でした.
まだまだ被災地は医療だけではなく様々な支援が必要です.今,我々に何ができるか?何をすべきか?良く考え,必要あらば第3陣目の医療班の派遣を考慮します.