2012年9月16日日曜日

9月16日 ある日の事案,轢断・出血性ショック

ドクターヘリ,ドクターカーは救急医を現場に運び,早期に医療を開始するための手段です.患者搬送が主目的ではありません.現場が近ければ走ってでも,自転車でも良いのです.それぞれの地域に応じた,地域が望む救急医療システムを構築する中に必要な手段が出てきます.そこにドクターヘリ,ドクターカーなどが組み込まれるべきでしょう.

この数ヶ月,地域におけるドクターヘリの活用方法を見出した消防本部からの覚知同時要請が増えています.そして,その効果も右肩上がりに見出されています!


センター長,井手先生,米田看護師がヘリ番のある日,ヘリ要請です.覚知同時要請,離陸後の要請内容は「年齢,性別,乗員不詳.乗用車の単独事故.横転で閉じ込めあり」.消防からは現場直近の着陸が指示されます.ドクターヘリは一直線に現場へ.

途中,傷病者情報が無線で入ります.「下肢轢断,ショック状態・・・」 井手先生はエアウエイスコープ,骨髄針を,米田看護師は加圧輸液を2セット,エスマルヒ,サムスリングなどを用意,確認します.フライトチームが現場で何をすべきか,何も言わずともわかり合っています.

支援隊の誘導で現場直近に着陸,救急車は患者を救助し直前に着陸地点に到着しています.救急車の横から井手先生,後部からセンター長と米田看護師が車内へ・・・傷病者は出血性ショック,不穏状態.頸動脈は微弱,脈拍は頻脈から今まさに徐脈傾向へ!心停止寸前,初期輸液,気管挿管,轢断部の圧迫止血,FAST・・・RTS 3.4(予測生存率 50%未満) 何とか心停止を回避しヘリ機内へ.患者接触からヘリ離陸まで14分.両足の止血処置が入ったのでいつもより少々時間がかかりましたが,状態の安定化には必要なことです.

ヘリ離陸しTECCMCへ受入要請です.「下肢轢断,出血性ショック,気管挿管済み,輸液ルート2本,FAST negative,緊急輸血の準備,初療室手術の準備」 これでセンター内は一気に動きます.ヘリ機内では平均血圧を60mmHg程度に保つよう輸液速度を調整します.そして機内でもう一度FAST.センターまであと何分と整備士さんが適宜情報をくれます.

TECCMCヘリポート着陸,ヘリポートから輸血を開始しつつCTへ.現場からsurvey & resuscitationが行われているからなせる戦略です.主な損傷,出血部位を確認,初療へ搬入しすでに解凍し終わったFFPがつながれます.そして,初療室手術へ・・・

翌日,ICU担当医だった岡先生から状態は安定化したとの申し送り.徹夜で呼吸,循環管理を行ってくれてました.病院前から集中治療まで一貫した救命チーム医療,そのスイッチを的確に消防本部が入れてくれています.


本日はドクターヘリ要請7件,ヘリ出動5件,2件は重複要請にてドクターカーで対応.7件全てが覚知同時要請でした.関係者の皆様,ご尽力,ご協力をいつもありがとうございます.


本日の画像

“荒波”のイメージが強い日本海,春から秋にかけては美しい景観です.
山陰海岸ジオパーク.
右端に遊覧船が写ってます.